《MUMEI》

そしてそんなぼくにルナは消毒液と包帯やガーゼを持って来てくれた。初めて自分が怪我をしてることに気付く。瞼が腫れて唇を切って血が出ているのを、申し訳けなさそうに黙々と拭ってくれる。この瞬間から涙がイッパイ溢れて止まらなくなっていた。
 もう二度と逢ってはもらえないと思っていたルナ。近くても遠く別世界の人間のような美しさと儚さ、そして強さを兼ね備えたルナ。ぼくには到底入り込めない感覚の世界に、独りっきりで生命を維持し続ける。誰にも踏み込めない底辺の独特な世界を保ち、永遠を約束されている存在として。

 誰かに訴えることもなく、誰かに頼ることもなく。

 ぼくの中で愛しい想いが募ってもうどうしようもなくなっていた。ルナは今ココ、手の届く場所にいる。心配そうな顔をしてボクを見上げている。ぼくの気持ちはピークに達した。

 手当てをしてくれてるルナをいきなり抱き締め床に押し倒して唇を合わせた。切ない感情と愛情が一気に膨れ上がる。痛みなんてどうでもよかった。目の前に居るルナとゆう存在をぼくに与えてくれた神様に感謝した。そしてルナも抵抗することなく細い腕を差し出し、ぼくを優しく受け入れてくれた。

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