《MUMEI》

此処に刻まれた二人永遠を約束する印。

 紅い十字架


 ぼくは帰り道どこをどう歩いたのかまったく覚えてないくらいに、テンションが上がっていた。リズミカルなステップと共に、嬉しさで大声を出してしまいたい気持ちを抑えるのに苦労した。ルナの独り言のような語りの時間の流れに、二人だけの空間。肌がふれあう真近でルナを感じながら時の秒針を刻む。こんなに満たされたのは生まれて初めてのことで、いつもの自分を保ち続ける自身がなくなりかけるほどだった。
 そしてこの感情は永遠のモノとなってぼくの中に形取り、愛しさだけがイッパイを締めてしまっていた。公園での出来事なんてもうすっかり過去の記憶と共に封印された状態でー

 今度はいつルナに逢いにゆこう。逢ったときは何処に行こうかなあー携帯は電話よりやっぱメールの方が眠りを邪魔しないからいいなーきっと。逢ったら最初に何から話そう?そっと手を繋いで寄り添うだけでも充分だ。ルナの好きなことは何でもして上げたい!たとえこの世の果てまで行って一輪の花を摘んで来てと言われても。
 胸に抱えた喜びはドンドン膨らみ続けて、このとき本当のルナを知ろうとする隙間さえも失っていた。

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