《MUMEI》

次第に不安は度を超えて増すばかり。落ち着きがなく持ってる鍵を何度も落としては拾い上げ、絡み付く脚のひざを手でほどいては探し続けた。
 もしかしたら庭に出ていつもぼくがパンやミルクを上げてるトラ猫を偶然見つけて遊んでるのかもしれない?と、だけど扉に手を掛けた瞬間鍵が掛かってることに気付く。顔が青ざめてゆくのが鏡を見なくてもわかった。

 JUJU…

 あの日、少女がひとりで歩いてるところをそのまま自分の部屋に連れ帰ってしまった。泣きもわめきもしない声を持たない少女。
 もしかしたら案外この近くに住んでいて、飽きたから自分の家に戻ってしまった?とも考えられたけど、あまりにも急でしかも布団はぼくが夕べ掛けて上げた形状で膨らみが無くなっているだけの状態。ぼくが買って上げてからお気に入りでJUJUが枕元に置いて眠っているテディーベアやキティーたちもそのまま同じ順番で置かれたまま。何故か窓や扉に玄関もすべて閉まっていて、開け閉めした気配もない。
 魔法にかけられてしまったの如く、ぼくは呆然と立ち尽くした。少なくとも事故は有り得ないとは思ったけど、何から考えて良いのか、思考回路が絡まって切れた先さえわからなくなっていた。ただ言えることは、

 少女がいなくなってしまった、とゆう現実。
ルナとの夢のような一夜も束の間、ぼくはそのまま体の力が抜けて、ぐったりとリビングの床に座り込んでしまった。

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