《MUMEI》

ああ、よかった。ひとつだけは守られた。

再び逢ったときの記憶が蘇って来る。二人だけで過ごした空間はきっと茶々丸に拉致されそうになったのを救ってもらった代償?

 別にほっておいてくれたらよかったのに。助けてくれなんてひとことも言っていない。どうせ最初から壊れてるんだから、今更もう一度壊されたからってどうってことない。まわすなり薬浸けにするなり好きにすればいい。アイツらはクラブ・ドレッドに住み着いてるヤツらと何ら変わりはないのだから。
 後悔の念が十字架に貼り付けられた自分像とダブり、重罪を犯した罰を受けなくてはいけないとー自責の念で堪えられなくなって来る。

 底の見えない崖のふちを歩き続けて来た。誰からも強く見られる虚像は、目的なく彷徨い方向を失っては凶暴化する。闇に囚われた罪人のように、奈落の底で目覚めては眠りに入るーをひたすら繰り返すだけ。

 何を見つけ出すこともなく。
 何を求め与えることもなく。

 普通の人にとって何でもないことでも、ルナにとっては限界なこともあるのだから。
 誰にも見つけられたくない。私は永遠に真っ暗な海の底で眠り続けていたいだけなのだから。

 お願い邪魔しないで。
 お願い狂わせないで。
 お願いそっとして置いて…

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