《MUMEI》

頭の中にあるゼリー状の液体がドロリと増して来た。いつもはゆっくりと満たされてゆくのに、溢れんばかりになってもう余裕がない。涙がさっきからずうーっと出て止まらなくなってる。人間はこんなにもイッパイ涙とゆう雫を出すことが出来るんだーと思うくらいに。
 しかしさっきと違って、今度はもう叫んだり狂ったりする気力すら残ってなかった。

 助けてたすけて、たすけて…

 それでも心の中で叫び続ける声だけは止むことがない。両手で抱え込む頭はゼリー状の液体でドンドン重さを増し支え切れなくなってしまい、ルナは無残に砕け散った残骸のひとつとなってしゃがみ込んでしまった。

 助けてたすけて、たすけて…

 やがて体内で化学反応を起こして、ゼリー状の液体は飴色に変化する。子宮の中で包み込まれるように心地よく、温かく。催眠療法にでもかけられたように、次第に眠りに似た安定感に身を任せる。

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