《MUMEI》

翌日のお通夜は家の近くの寺院で行われた。

 思ったよりユウヤの昔の同級生やら先生がお線香を上げに来てくれた。母は精神的にかなりやられてしまって泣きやむことはなく、実際に動いてくれたのは親戚や近所の知り合い、結局家を出ていった父親は最後まで顔を見せることはなかった。

 お経の間中ぼくは奥の隔離された部屋で独り、たまに障子の隙間からお通夜の様子を伺うだけだった。そしてユウヤに逢って上げられなかった自分をずうーっと悔いていた。涙が止まらなくなって、嗚咽と自責で意識の回線が途絶えていた。

 小さい頃からぶっきらぼうだったぼくに、いつも付きまとっては優しく微笑んでくれたユウヤ、ぼくに哀しいことがあると何故か察知して無理に話かけようとはしない、でもぼくのことを心配してくれて傍にずっと付いていてくれた。
 事故で寝た切りの弟を見る恐怖感がぼくの、逢いに行くとゆう行動を踏み留まらせた。病院にまで足を運んだこともあったけどー結局、病室の扉を開ける勇気のナイぼくには何もして上げることが出来なかった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫