《MUMEI》

ユウヤ、弱いお兄ちゃんで本当にごめん…

 思い返すとまた涙が溢れ出して来る。そしてときおり隙間が出来たと思ったら無の状態になって、乾いた涙を拭くこともなくー瞬間移動で別の場所に運ばれてしまった残骸のように、ただぼんやりとしていた。

 そして今も、真っ直ぐユウヤの遺影を見られないぼくは本当に情けない。
  時間を戻すことはもう出来ない。ぼくは残酷な時間を恨むことでしか、ユウヤを守れなくなっていた。


 自分の家までほんの数分で着くハズなのに、長く遠くいつまでも辿り着けない感じだった。何かひとつ悪いことが起こると続きそうで、あの日見た夢のようにメビウスの輪の中から抜け出せなくなってしまうのではないか、とゆう不安と恐怖感が体を動かせなくしていた。

 どうせ部屋にはもうJUJUもイナイのだから帰る必要も無いのだけど。

 それでも結局家の前まで到着してしまった。仕方なく鍵を開ける。重々しい足取りで玄関のわたりを歩き、喉が渇いたことに気付いて冷蔵庫に入ってるミルクをグっとノドに流し込んだ。そのときクセで左上にある棚のパンを掴んでいた。

 そうだった、メインクーン。

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