《MUMEI》

ぼくは窓枠にペッタリ座り込んでトラの猫をもう一度抱き締め、刺さっている木のクイを痛くないようにそっと抜いて上げた。そしていっぱい頬ズリをして気が済むまでワンワン泣き続けた。

 ごめんね。

 一時が経って、いつもの大好きだった木の陰に誰にも邪魔されないように穴を出来るだけ深く掘って埋めて上げた。食べるはずだったミルクとパンは傍に置いて上げて、引き出しをあっちこっち探して見つけたどこかの珈琲屋のマッチに火を付けてお線香代わりに立てて。

 
 この夜、母親はやはり親戚の家に泊まって帰って来なかった。気が付くとぼくはダランと、リビングで窓を開けっぱなしにして寝ていた。流石に夏の終わりだから少しヒンヤリしてきたけど、風邪をひくことなんてどうでもよかった。

 いま二階の自分の部屋に上がっても、どうせJUJUが居なくなった哀しみが募るだけ。
 このまま木陰を見つめていても、メインクーンが生き返ることはない。

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