《MUMEI》

きっと弟がひとりでは寂しいから連れて行ったんだ。

 そう勝手に物語を創って紛らわせるよう自分に言い聞かせたけど、哀しみはそう簡単に消せるものではないとゆうことはわかっていた。
 着替える気にもならないし、食べる気にもならないし、もう泣き尽くして涙も出なくなってるからー何をやりたいとも思わなかった。

 無気力。

 しばらくして何も目的がないまま、フラリと遊び慣れた渋谷の駅辺りまで歩いて行った。相変わらずの人の多さはむさ苦しくて気分が悪くなりそうになったけど、家で色んなことを考えているよりはましだった。
 
 今日は独りで部屋にいる気にはなれないからーそう思って何気にあっちこっちに並ぶ露店を眺めたり、疲れたら駅寄りの路上に座り込んだりして過ごしていた。乱れたヘアースタイルも夕べのままの着慣れないワイシャツやスーツのしわもちっとも気にならない。汚れても平気だし変な目で見るヤツがいても、まったくかまわない。

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