《MUMEI》

立ち去ろうと駅の反対側へと歩き出す。群れは次第におさまって、事故現場の辺りが見えてくる。こうゆうときはなんとなく視線はそっちを向いてしまい、それは知った人間であるのではないか?とゆうことに気付いた。

 間違えない!

 かなり痩せているけど…

 誘導された人たちの輪の中で横断歩道を舞台にヘラヘラとフラつきもつれながら歩いている。あのときルナを拉致しようとした取り巻きの一人と同じように。
 警察に止められたけど気が付いたらぼくは同じステージへと駆け寄っていた。

「さゆり!?」

 かろうじてさゆりとゆうオーラだけは維持しているかのように見えた。どうやら飛び出しても事故にはならなかったようで、血のあともなく怪我をした様子もまったくない。ひきそうになった相手の車の男は事情を聞かれてるみたいで、怒りながら何やら文句を言っている。
 ホっと胸を撫で下ろしたも束の間、改めてさゆりの真ん前に立ってギョっとした。次に繋がる言葉も失った。

 さゆり…

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