《MUMEI》

モデルのような顔立ちに軽いロングソバージュ、普通の男の子が見たらほっとかないタイプ。堂々と歩く姿に生まれながらにしてモデルの素質を兼ね備えた女の子もいるもんなんだなあーと感動したくらいに。
 でも今、目の前にした彼女は見るからに薬浸けになってまったくの別人に変貌していた。
 頬はこけ、血の気はなく、あんなに美しかったソバージュヘアーも白い色が混ざって酷く乱れていた。視線はうつろで焦点はまるで合わず、どこに向かって歩いているのかもわからない足取りで唇は乾き切ってひび割れていた。
 ぼくはまるで山姥のような風貌に変わってしまったさゆりから、視線を外すことが出来なくなってしまっていた。

 ざわついた人だかりの中心にさゆりとぼく。フっと緩んでいた口元の口角が下がり締まった。相変わらず焦点は定まらない動きをしてたけど、ぼくの方にソロリと近付いて来た。物凄く真ん前のなのに、かなり遠くからようやくココまで辿り着いたみたいにフラーっと。
 そして手を差し出したと思ったら息なりぼくの胸元に手を掛け、携帯に付いてるあるモノを引きちぎって嬉しそうに頬ずりを始めた。

 それはJUJUとのお守り。ラメでコーティングされた黒兎の編みぐるみ。引きちぎられた黒兎のブルーの瞳が哀しそうに見えた。

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