《MUMEI》

ぼくがいけなかったんだ。ぼくのせいだ、みんなぼくのせいなんだ。

 何がありがとうだ。さゆりを壊したのはぼくじゃないか。何も悪いことしてないのに、ぼくの無責任な行動で死ぬよりつらい苦痛を与えてしまった。もう変えようのない残酷な現実と未来を創ってしまった。彼女はこれからイッタイどうやって生きてゆくのだろう。生きるとゆう意味も、死ぬとゆう哀しみも、すでにもう感じなくなっているのかもしれない。ぼくは取り返しの付かない試練を与えてしまった。ぼくはさゆりに夢を持たせる自由を取り上げてしまった。

 ぼくは…

 横断歩道の端に突っ立って、信号機が時計の代わりに時間を刻んでゆくのを別次元から覗き見てる感じ。街中を行き交う人に紛れても、一歩を踏み出すことが出来ない。ぼくはただのモノになってしまったのだろうか?

 色んな記憶が走馬灯のように流れてゆく。失ったモノの大きさが今になって巨大化して、ぼく自身を押し潰そうとしている。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫