《MUMEI》

一瞬右手を取っ手から離した瞬間、痛みでしゃがみ込みそうになって扉をドンと押してしまった。廊下に響く音はビックリしたけど、そのお陰で扉横の窓がほんの少しだけ動くのがわかった。

 窓が開いてる?

 どうせ寝てたりいなかったりするのなら、せめて中を覗いて確認だけでもして帰ろうーと十センチほど開けてみた。

 相変わらず照明は部屋の奥からのブルーな明かり一つだけでよく見えない。目を凝らし耳を澄ましててルナの動きを読み取ろうと全神経を集中してみる。コポコポと音を立てる熱帯雨林の空間に、リビングから広がる大きな部屋に差し掛かる部分が、微妙に乱れているのがわかった。
 嫌な予感が体中に危険信号を送る。ぼくは左右に見られていないことを確認して窓を乗り越え、誰に了解を得るでもなく土足で部屋に上がり込んだ。

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