《MUMEI》

「硝子の靴を履いた少女が記憶の森にゆきました。ひっそりと淀んだ闇はあまりにも暗過ぎて方向を見失ってしまいそう。

 斑にちりばめられた汚れの残骸は永遠に続く漆黒の闇へと誘い、かすかに揺れる甘く熟れた香りは欲と罪と幻をぶれた幹脳に染み込ませる。
 規律正しい人間なるモノのゆえんは地上に舞い降りた堕天使の運んで来た贈り物。混じり気の無い色彩に幻覚の明日を見せられる。

 クリーム状にうねりを持ち、立ち昇る真夜中の儀式は愚の骨頂。白い煙に魅入られ永遠の快楽に飲み込まれて、己の姿をも変えてしまう。
 三日月の裏に潜む丸い道化はただならぬ動きに怯え身を潜め、戦慄の声を持つ哀れな眠りを邪魔されたモノの怒りにふれるだろう。

 硝子の靴を履いた少女が記憶の森にゆきました。硝子の靴を履いた少女が記憶の森にゆきました」

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