《MUMEI》

やっと瞳を確認することが出来た。やっぱりもうろうとしているだけで、目の前にぼくがいることはわかってるんだ。
 ホっとするのも束の間、焦る気持ちを押さえて、もう一歩大きく前に出て再び手を伸ばしてみる。

 あと十五センチ。

 もうちょっとだ!

 指先がわずかに振れたーと安心しかけたそのとき、白い少女に戻ったルナはわずかな微笑みを残して、音も立てずにスローモーションに時間をコマ送りにゆっくりと天空へと消えてしまった。ピンクの十字架と、ぼくにしか見えない天女の羽衣だけが虚しく窓から見える空間を舞って。

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