《MUMEI》

弱ってる神経に怒濤の如く襲いかかって来る現実は、悪夢の続きを見てるかの如く到底理解出来るものなかった。
 人間は本当に哀しみを深く感じたとき、笑ってしまうとゆう。まさにその通りだった。現実逃避した自分を責めることなく、たとえ間違っていてもぼくが理解したことだけを正当化してゆくことでーなんとか押し潰されそうな自分を保っていられた。

 部屋の中に無残に散らばった硝子の欠片や、引きちぎられた残骸と色の変容しかけた血液の塊。もしかしたらぼくは気が狂ってしまったのかもしれない。

「アハ…」

 顔が笑ってる。自分の顔なのに他人の物みたいに調節が効かない。心は哀しみを越えてしまって、傷みを経由して感覚が完全にマヒしてしまっている。出窓から薄っすら見え隠れしてる三日月は、ぼくを嘲笑っているかのようにこっち側を覗き見してる。

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