《MUMEI》

そう思うとこらえきれない感情が込み上がって、嬉しさと溢れそうな涙で視界がぼやけてゆく。

 もう独りにはさせないよ…

 ルナの化身であるJUJUを再び抱き締めたいと胸がいっぱいになって、ぼくはゆっくりと起き上がった。そして上半身だけを起こした状態で両手をいっぱいに広げた。

 JUJUおいでー

 窓に柵の組み込まれた部屋。薬品の香りに染み付いたアルコールの匂い。精神を病んだ人間には、もっともふさわしい居場所なのかもしれない。

 閉ざされたままの空間に、ぼくはたった独りーこのときを待っていた。

 ズン!

 とゆう音と共に、これまでのことが映画のスクリーンのように映し出される。ルナとの出逢い、少女との日々、苦しめてしまった人たち、傷みを受けた哀しみの日々。
 でも、何故かすべてが懐かしい出来事のようにも思えて来る。遠く冷めた空間にぼくは存在し、人間の在り方をまるで守護のように見続けて来たような錯覚と誤覚。そして今ココで、堕ちてしまうのだろうなあーと冷静に受け止めているもうひとりの自分。

 すべて、ぼくが起こして来たこと。

 すべて、ぼくが犯してきた罪の残骸。

 すべて、ぼくが課せられた運命の声たち。

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