《MUMEI》

人間は自分の始まりを知ったとき、初めて終わりに近付けるのかもしれない。
 そしてぼくは今日この場で、命の炎を消さなくてはならない運命にある。今度こそ永遠の約束を果たすために…

「キャーー」

 叫び声と共に響き渡る慌ただしい人たちの靴音。

 世間はなんだか騒がしい。もっとそっとして置いてくれないかなあーぼくはもっとゆっくり深く眠りに付きたいだけなんだよ。

 次第に床を紅い色が占領してゆく。

 真っ赤な世界にたったひとつだけ漂う白い船は、ぼくをどこまで運んでくれるのだろうー

 ぼくは痛みもなく薄れゆく記憶の中で振り子のようにゆーらゆらと揺れる、黒兎のブルーの瞳だけを確認した。

                 了

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