《MUMEI》
噂の真相
「で? 本当の所はどうなの?」


(どうなのって言われても…)


事実は、噂と似ている。


俺がサボったのは本当だし


奈都に向かって冷たい態度をとったり怒鳴ったりもしたし


最終的に、あの場にいたくなくて、学校を後にした。


(意外と力が入ったのかもしれないし)


俺としたら、振り払っただけのつもりだったが、奈都はそうとらなかったのかもしれない。


(奈都の様子、確認しなかったし)


「別にさ〜、祐也がサボったって、あの女にキレたって、俺は気にしないよ?」


黙って俺を見つめる志貴の隣で、頼が軽い口調で言った。


「でも、祐也がそうなった理由には興味がある」


頼の口調は、今度は真面目なものだった。


「何か、理由があるんでしょう?」


『話してほしい』


志貴の口調が、瞳がそう訴えているのがわかった。


(理由はある、けど…)


『愛する人の命日で、誰にも邪魔されず、静かに過ごしたかったから』


なんて、本当の事は


(言えないよな)


言ったら、旦那様の事も


俺の過去も話さなければならない。

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