《MUMEI》 合流狭い廊下だが、羽田たち以外に誰の姿も見えない。 出払っているのだろうか。 そんなことを考えていると、無言で隣を歩いていた凜が口を開いた。 「先生、わたしはちょっと出てきますね」 「え、どうして?」 「ここで食事をするのはちょっと」 羽田は言っている意味がよくわからず不思議そうな表情をする。 「姿の見えないわたしが食事をしていると、ここでは怪奇現象です」 「ああ、そうか」 ようやく意味を理解した羽田は納得して頷いた。 凜はこちらの物に触ることはできるが、凜が持ち上げた物は彼女が見えない人が見ると何もないところに浮いているように見えるのだ。 それでは確かに怪奇現象だ。 しかし、一人でここに残されることはひどく心細い。 「大丈夫ですよ。食事したらすぐ戻ってきますから」 そう言う凜の姿の後ろから見覚えのある人影がこちらへ駆けてくるのが見えた。 「よお、凜。先生」 片手を挙げて人懐こい笑みを浮かべた彼は昨夜別れたきりだったレッカだった。 「あ、おはよう、レッカくん」 レッカは二人の近くまで来るといきなり「困るんだよな、二人とも」と眉を寄せて腕を組み、羽田と凜に向けて言った。 前へ |
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