《MUMEI》

雨は、一向に止まない。





風も、ひどくなるばかり。





「──あれ、まだおったん?」

「ぁ‥すいません‥」

「星野と一緒に帰ったんやなかったん?」

「えっと‥、ちょっと図書室に行ってて──」

「図書室?」

「はい──」

「大丈夫なん? 送ってったろか?」

「ぃ‥いえっ‥」

「独りでは帰られへんやろ?」

「大丈夫です、傘持ってますし‥」

「遠慮せんとき、今日は車やから──家まで乗せてったるわ」

「いえっ、ほんとに大丈夫ですからっ」

「大事な彼女を、こないな嵐の中に放り出す訳いかへんやろ?」

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