《MUMEI》

「失礼しまーす…うわっ!?」

あ、やっば…

「先生に向かってうわってなんだ?加東。失礼だろう?」

「す…すいません…。」

そのイヤらしい言い方。もう逆に大声で怒鳴ってもらった方が楽なのに…。

「今日はたっぷり説教してやる。こっちこい!」

「え、あ、はい…あだだ、ちょっ、先生!?」

ひ、引っ張らないでぇ…。

これから向かうは生徒指導室。びっくりすることに無駄に教室2倍くらい広い。おまけに隔離されてて、ちょっとやそっと暴れたって何も聞こえないゴリ助の住処だ…。

「口答えするな、行くぞ。」

「あ、あうぅ…」

海…これ時間かかりそうだよ…はぁ。


―――――――――



初めて来たな…ここ。ボクそんなに悪いことしたかな…もしかして、つもり積もってってことかな?…あうぅ。

「…ふぅ。さて…と。」

「は、はい…」

隔離されて、カーテンも閉められ薄暗くなっている生徒指導室の雰囲気が、よりいっそうボクの恐怖を駆り立てる。

「ん?まぁそう固くなるな。実は説教しに来た訳じゃねぇ。とりあえずそこ座りな。」

そういって、先生は対面になっている机に座った。なんか…まるで取り調べだよ。あうぅ…。

「そんなにオレが怖いか?まぁ普段は説教ばっかりだからなぁ、ハハハ」

そういって豪快に笑い飛ばす先生。…あ、ありゃ?おかしいなぁ。

「ちなみに言っとくが、セクハラなんかしてねーぞ?校則破ってスカート短くする方がわりぃんだ。全く…。」

なんか…今までとイメージが違う。まぁ…見た目ゴリラだからやっぱ怖いのは変わんない…

「まぁ…見た目ゴリラだからやっば怖いのは変わんないか?」

うわっ、思ってたのと全く同じこと言われた!?最近こんなん多いなぁ…。

「まぁとにかくだ。今日呼び出したのは気になることがあったんからなんだな。加東お前最近なんか悩み事でもあんのか?」

「えっ…?」

「いやな、勘違いだったら謝るが、なんだか最近お前と須藤の様子がおかしい感じがしてな。須藤はバイトがあるって言ってたからとりあえずお前から話を聞こうと思ったわけだ。」

…おかしいな。ボクの知ってるゴリ助先生はこんなんじゃない。妙に優しい…?

「…先生本物ですか?」

「ん?失礼だな。オレだっていつも叱ってばっかじゃないさ。これでも一応教師だからなぁ…目についた校則違反は叱るが、普段はあんなんじゃねぇよ。」

…わぁお。驚いたぁ。

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