《MUMEI》

「まぁこんなやる気なさげな姿見られたら生徒にナメられちまうからなぁ。ま、加東なら大丈夫だろ?どうだ。少しは信用する気になったか?」

ガハハと豪快に笑いながら、ボクの方を見てくる。…なんだか父親に会った気分だ。何かに包まれて…暖かい感じ。

「は、はい。」

「そうか、そりゃ良かったぜ!それでだ。本題に入るが、もし悩み事があったら聞くぞ?力になってやる。」

…先生になら話しても大丈夫かな。めっちゃ強そうだし、守ってくれるかも。

「実は…。」





その時だ。周りの空気が変わった感じがしたのは。

『困るなぁ。そんなホイホイ力のことをばらされちゃ。』

…!なんだ…?

『加東くんだっけ?キミに生きていては困るんだ。僕らの主の野望の邪魔になる。』

声が聞こえる…。…!ドアの方か!ボクは勢いよく振り返った。

『こんな辛気くさいとこで悪いんだけど…死んじゃって。』

なっ…!?誰だ!?ボクもついに襲われ…「ガァァ…」…!?

先生の方へ勢いよく振り返ったボクが見たものは、白目を剥きこれでもかと言うほど口を開けながら…今にもボクを殴ろうとしている先生だった。

「グッ…。せ、先生!?」

先生の様子が明らかにおかしい。…何か呟いてる?

「ガァァ…カトウ…リク…コ…コロス!!」

…!!

再びボクに向かって右手を振り上げた先生。気を許したとたんの出来事に動けなかったボクは、なすすべもなく思いっ切り殴られてしまった。

「イッ…あうぅ…。」

なんだ…急にどうしちゃったんだ!?訳がわからない…。

そんなボクの様子など関係ないとばかりに、再び右手を振り上げボクの顔を殴りかかってきた。

「…あうっ!!」

今のパンチでドアと反対側の窓に叩きつけられたボク。ものすごい音と共に、ボクのぶつかった窓が砕け散った。

「な…なんで…。」

信用できるかなって思ったばっかりだったのに。どうしちゃったの先生…?

『なんだ、反撃してこないのかい?そのままだと彼に【殴られ】っぱなしだよ?』

また声が聞こえた。…やけに【殴られ】を強調していってたな。

「ウゥ…カトウ…リク…コロス!!」

またボクの方に向かってきた…。ゆっくりと右手を振り上げ、ボクの方へ歩いてくる。

真っ白になった頭ががやっと少し戻ってきた…。おかげで一つわかったことがある。ボク…このままなにもしないままじゃ…間違いなく殺される!

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