《MUMEI》
切札
「そろそろ学校に行きましょう」


志貴が時間を確認して、立ち上がった。


「雑音あると思うけど、気にしないでね」

「いいよ、自業自得だから」


俺への中傷を気にする志貴に、俺は笑いかけた。


「祐也って、逞しいよな」


感心したように


呆れたように、頼が笑った。


[そうそう、祐也]

「「何で、英語?」」


思い出したように付け加えた頼が英語だったから、俺と志貴は同時につっこんだ。


「果穂さんから伝言」

「果穂さんから?」

「そう。俺がここに来たのは、半分自分の為で、半分果穂さんの命令だから」


頼は、大きくあくびをした。


そして、英語で俺に伝言を伝えた。


[祐也だけの『特権』はいつでも使っていいから]


(あの事か)


それは


俺が、頼と厳の花嫁候補達に使える


切札


だった。


(できれば、使いたくないな)


そう思いながら、俺は頼の言葉に頷いた。


俺の『特権』の具体的内容は


果穂さんと大志さんしか知らなかったから、志貴も頼も気になるようだったが


『果穂さんを敵に回す覚悟があれば教える』


俺のこの一言で、二人は閉口した。

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