《MUMEI》

「ガァァ…カクゴ…シロ!」

倒さなきゃならない…でもどうやって?…ボクのVerbは…。

「ガァァ!!」

固く握られた拳が急に目の前に現れた。突然だったが、その場にしゃがむことでなんとかやり過ごす。

「グァァァ!…オ…オノレ…。」

避けた拳はそのまま後ろのガラスの破片に刺さり、開いた手の至るところから血が流れ出している。

「せ、先生…?その手じゃもう無理だよ、病院に行「ガァァッ!」…うわっ!?」

先生が、ガラスが刺さり血が流れ出しているそのままの拳で、ためらうことなく殴りかかってきた。ヤバい…このままじゃ避けられない…!

「シネェェ!」

「うぅっ…仕方ない、【切る】Verb!」

避けられないと踏んだボクは、ためらいつつも【切る】Verbを先生に向けて放ち、殴りかかってきたその腕を正面から触り、肩まで無数の切り傷をつけた。


プシャァァァァ…

「ギャァァァァ!!」

先生はそう叫び、噴水のように至るところから吹き出す血を押さえるように、体全体で右腕を抱え込んだままその場にうずくまった。

「あ…あぁ…」

ついに…ついに人に対して使ってしまった。【切る】力…一瞬で人を殺せる力。それを…人に使ってしまった。


「ァ…アァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

もう戻れない…ボクは人を…やっと信用できそうだった先生をこの手にかけてしまった。ボクは…人殺しだ。もう…なんでもいい。

そしてボクは、絶望が自分自身を支配するのを感じながら、入口に向かって歩き出した。…はずだったのだが…。





「グゥゥ…ハァ…ハァ…。」

…!!生きてる!?あんだけ大量に出血したのに!?な「ガァッ!」…グハッ!?


なっ!?今どこから殴られた!?

ボクは今入口の手前にいる。でも先生は、さっきボクを殴ったまま窓側にいる。なのに…今絶対お腹を殴られた感覚があった。

「ウァァ…」

先生がボクに向かって振りかぶる。そんなとこから殴っても絶対当たんな…ガッ!?

「うっ…!!」

なんで…!?絶対当たんないはずの距離にいるのに!


『フフ…もういいかな。飽きたよ…飽きた。そのまま殺しといてね。じゃ、バイバイ。』

…声が消えた。残されたのはボクと…

「ガァァ…コロス…コロス!!」


狂ってしまったらしい…先生だけだ。

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