《MUMEI》
ブランコ
花火の上がる音がした。

−花火だよ−

亜子は向かいの三咲にそう声をかけようと思ったが、三咲はさっきから、つまらない事でムクレタまま、今もそっぽを向いている。

−ふぅん−

これは亜子が何かに区切りを付けたい時の口癖だ。
もっとも、声には出さないから、誰にもわからない。

けれども亜子にはこう言った、一人で区切りを付けないといけない事がたくさんある。

大人や友達の不条理・答えの出ない悩み。
亜子は、他の人がどのように些細な「?」や「…」や「ヤ」に対応しているのか知らない。

あるいは他の人にはそんな事は気にならないのかも知れない。


八月の昼下がりの公園は、暑すぎて遊んでいる子供もまばらだ。

亜子と三咲の乗る4人掛けブランコも、さっきまではいい具合に日蔭だったが、そろそろ太陽に照らされる。


−三咲、私先帰るね−
そう言おうとした瞬間。

「私、先帰ってるね」

三咲はそれでも、言葉に刺を含ませないような言い方で、スラリとブランコを降り、荷物を持ってすたすたと行ってしまった。

−やられた−

亜子は、バランスの崩れた4人掛ブランコに一人、荷物と一緒に取り残されて、降りるタイミングを見計らわければならなかった。

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