《MUMEI》

――…カチリ…



猪俣は小さな音を掌で包み消した…。




仮眠室の中を見渡すが、他に武器になりそうな物は無い。



だがドアの真上には事務所フロアの集中配電盤があった。



猪俣は音を立てぬよう細心の注意を払い、配電盤の葢を開けた。




そしてメーンブレーカーのスイッチに、銃を握った右手をかける。




左手は、ゆっくりとドアノブへ…




息を潜めて覚悟を決める…。

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