《MUMEI》

足元は、ボクのVerbによって出来た傷から流れ出した血で真っ赤になっている。先生は、そんなこと気にするまでもないとばかりに、ボクに対して構わず拳を振り上げようとしている。





…でも、なんかおかしい。なぜなら、先生とボクの間はゆうに3mは離れている。そんなとこから殴ろうとしても当たるはずがない。それでも、関係ないとばかりに…


「ガァッ!」

「ぐっ!…はぁ、はぁ…なんで…?」


そんな魔法みたいなことがあるのだろうか…ん?魔法?まさかっ!?


「先生も使役者!?」

「…シエキシャ?…シラン…シネ…!」

「うわっ!?」

いつの間にか、右手を振りかざした先生が目の前にいた。焦ったボクは、とっさに両手でガードしようとした。…そのはずなのに、

「ぐわっ…!な、なんで…?」

確かにガードしたはずだ。その証拠に、ガードした両腕にもしっかり痛みが残っている。なのに、思いっきり正面から殴られたような痛みが顔に走った。

「こ、これはやっぱり…」

間違いない。証拠は無いけど、先生は【殴る】Verb使いなんだ。

「シブトイナ…ハヤク…シネ!」

そうわかったところで、正直ボクはことごとく殴られて、もともと体力も力もない分すでに満身創痍だった。身体中の至るところが痛い。鼻からは鼻血も出ている…止まる気配がないってことは、もしかして折れてるだろうか。

「と、とにかく守らなきゃ…!」

先生は様子も変わらず、ものすごい勢いがついた拳をボクに向かって振り上げる。何か…何かできることは…?

「あっ…あれなら!」


ボクは、とっさにそばにあったら机を持ち上げ、即席の盾にしようと持ち上げた。

「ソ…ソンナモノ…カンケイナイワ!」

…!?なんだ!?先生の拳が光って…

「ぐわぁっ!?」





う…うそだろ。机を突き抜けて殴って来やがった。おまけに今までとは段違いの…!

「ぐっ…ゲホッ、ゲホッ!」

とっさに口を押さえたボクの手には、べったりと吐き出された血がついていた。

「も…もう…だめかな…」


おまけに、さっき破壊された机の破片が、ちょうど拳が当たった部分に深々と刺さっている。多分破片ごと殴って刺さったんだろう。

「ガハハ…モウオワリカ。シネ!」

そういって、とどもの一発を繰り出そうとしている先生。もう…助からない。

「海…ゴメン。」

そういってボクは、死を覚悟して目をギュッとつぶった。

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