《MUMEI》
呼び出し
「あ、あのさあ、祐也…」

「噂の真相はどうなんだ?」


気まずそうにする守の言葉を遮り、真司が質問してきた。


「あぁ、…」


俺が、志貴としたのと同じような説明を始めようとした時


ガラッ


「田中、いるか?」


まだ授業前だと言うのに、担任が入ってきた。


「はい、います」


俺は存在を示す為に立ち上がって答えた。


「一緒に来てくれ」

「はい」


(頼の言った通りだな)


俺はそのまま担任と一緒に教室を出た。


担任は、教室を出る前に『一時間目は自習にする』と教室にいた同級生達に伝えていた。


(もしかすると、これは…)


俺は嫌な予感がした。


そしてその予感は、担任が俺を職員室ではなく、校長室の前に連れて来た時点で、確信に変わった。


「失礼します」

「…失礼します」


(やっぱり)


中にいたのは、校長と教頭


それに、奈都と


奈都の母親の姿があった。


『娘を溺愛している教育熱心な母親』

『既に成人した息子にはそうでもないが、娘が絡むと冷静な判断を出来ないのがやや難点』


果穂さんから渡された資料を思い出しながら、俺は軽く頭が痛くなった。

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