《MUMEI》
暴言
「いいの、ママ…わ、私が、悪いの…っ」


奈都はうつむき、泣いているように見えた。


そう


大人達はその様子に慌てたが、俺は、嘘泣きだと気付いた。


(この様子だと、志貴と頼が言ってた通り、教室のも嘘泣きだな)


冷静な俺と対照的に


「なっちゃんは悪くないわ!」


奈都の母親は、再び力説した。


(これが狙いか)


奈都は、母親が自分に甘い事をよく知っているのだろうと


俺は、少し感心しながら


奈都の母親の話を、右から左へ聞き流していた。


自分の娘がどれだけ心優しく


俺が、どれだけ冷酷で、酷い人間か


俺への批判が酷いので、教師達が止めようとしても


俺は、ただ静かに無表情で聞いていた。


「…そういえば、あなた、親がいないんですってね」


その先の言葉を、聞くまでは。


「保護者も独身で、近くにいないそうね。

だから

ろくな教育を受けていないから

こんな人間になるんじゃないかしら」


その時、俺は


忍ではなく


旦那様が、俺のせいで批判されたような感覚に陥っていた。


(…許せない)

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