《MUMEI》
反撃
「すみません、先生方、少し席を外していただけませんか?」


俺の声はかなり冷たいものだったらしく


奈都の母親はピタリと話を止め


三人の教師は戸惑い


うつ向いていた奈都も、顔を上げた。


「できれば、彼女にも一旦出て欲しいのですが…」


そう言って俺が指差したのが奈都だったので、周囲は更に混乱した。


「一体どういうつもり!?」


興奮状態が続く奈都の母親を、俺は手招きし


小声で


「俺は、『花嫁候補見極め人』です」


そう、囁いた。


その瞬間


奈都の母親は、明らかに動揺し始めた。


奈都の母親は


花嫁候補の家族達は


花嫁候補見極め人が、俺である事は知らない。


しかし、その人間が高山一族の


あの、高山果穂のお気に入りで


ある『特権』を持っている事は知っていた。


「二人きりで話しましょうか?」

「は…い」

「ママ?」

「いいから、出ていきなさい、奈都」

「…はい」


厳しい表情を向ける母親に戸惑いながらも、奈都は校長室から出ていった。


その後に続くように、三人の教師も一旦扉の外に出て


俺と奈都の母親は、二人きりになった。

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