《MUMEI》
青年
ヨタヨタと亜子は三つの荷物を抱え歩いていた。

目指すは三咲のアパートなのだが、どうも道に迷ったらしい。

近道しようと、公園を逆に突っ切り見知らぬ住宅街へ迷い込んだ。

道を聞こうにも、午後の住宅街は意外と静かで、真っすぐ延びるアスファルトの陽炎だけが、ゆらゆらと揺れている。

悔しいが三咲に迎えに来て貰おうと、公衆電話を捜したが、それさえ無い。引き返すにも、既にかなり歩いてしまった。

重たい荷物を3つも抱え、袖の無いワンピースから剥き出しになった肩が、ジリジリと日に焼けている。

−とりあえず−

亜子は、ひときわ大きな家の玄関先の木の下に、座らせて貰う事にした。

腰を下ろした瞬間、ぐにゃりとした感触と、嫌な温かさが、指先から背筋を伝う。

−あぁ−

案の定だ。
亜子はわかっていたのだ。こんな感情をもって何かする時は、必ず裏目裏目に出て上手く行かない。

亜子が手を着いた先には犬の糞が、いかにもホヤホヤで置いてある。
亜子は子供のように泣きたくなった。

ガチャリ

「あ」

涙目になりながら振り向くと、家から男の人が出て来た。

「あ?」

ぼんやりと亜子を見下ろす背の高い青年の手には、ビニール袋と大量のテイッシュペーパーがあった。

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