《MUMEI》

死を覚悟して…ギュッと目をつぶったその瞬間。







「陸!」


あ…この声は…?息も絶え絶えに、力を振り絞ってその方向を見る。

「…うわっ!?」

海の姿が見えるか見えないかのうちに、ボクに向かってものすごい勢いで飛んできた海は、先生の拳を間一髪で避けながらボクを掴みそのまま窓の外へと飛び出した。

「正義のヒーロー海ちゃん参上…ってふざけてる場合じゃないね。ひどいケガ!大丈夫?ゴリ助にやられた?」

そういって宙に浮きながらボクを見つめてくる。

「う、うん…ゲホッ、ゲホッ!」

あ…ヤバ、また血吐いちゃったみたい。…うわ、海が魔王になってる…。

「あのくそバカが相手かぁ!ぶっ殺してやるから覚悟しろテメェ!?」

…え、えっと。

「…う、海?」

「…ハッ!?あ、いや陸の敵は必ずとるわ!」

そういって海は顔を背ける。…一瞬ゴリ助先生より怖かったよ…。

「あ、でも操られてるみたいなんだ。しかもVerbも使うみたいで…。だから、近くにもう一人いるかも…」

「へぇ…相手にとって不足なしだわ。日頃の恨みもあるし…あの変態ぶっ殺してやる♪」

…可愛くいったって無駄だと思うよ、うん。

「あ、あの…あんまり、ボコボコには…しない…で…ね…。」


それだけ言い切って、ボクは余りの出血と疲れで気絶してしまった。


―――――――――



「さて…。陸様の敵は必ずとります。少し休んでいてください…。」

そういって海は、陸を岡の大樹まで連れていき、そこに寝かせた。

「…絶対に許しません。…陸様、行ってきます。」


そう言い残して、海は全速力で先生の元に急いだ。


そしてここに、陸や空すら知らない、3人にとって大きな転機となる…伊吹海の戦いが始まったのである。

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