《MUMEI》
警告
「あの、今回の事は、その…」

「言いませんよ」


(果穂さんには)


忍には報告するが、それは言う必要は無いと思った。


「ただし」


俺の言葉に、ホッとした奈都の母親は、また顔をこわばらせた。


「次はありません。またこんな事があったら報告させていただきますし



特権も使います」


『特権』


「そ、それだけはやめて下さい!」


報告の部分だけでも震えていた奈都の母親は、涙目で訴えた。


(まぁ、必死になるよな)


娘を溺愛する母親にとって、これほど辛い事は無いから。


それは、溺愛までいかなくても、温かい家庭を築いている他の花嫁候補達の母親にもいえるだろう。


『花嫁候補見極め人』の『特権』


それは


俺が、花嫁候補達を『人間として問題あり』と判断した時


問答無用で吾妻高校を退学にし


県外にある全寮制の高校へ転校させる事ができるというものだった。


ちなみに


転校させる高校の理事長は果穂さんの知り合いで


学費も生活費も高山家が保障する。


『寛大な処置でしょ? 私は優しいから』


笑いながら果穂さんは俺に、特権を与えた。

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