《MUMEI》
ダメ押し
「入るぞ、祐也」

「…へ?」


(この声、いや、まさか…)


「間抜けな顔をするな」


既に部屋に入っていた人物は、嫌味な笑顔を浮かべた。


「あ、あなたは…?」


その


ホストのような


ヤクザのような外見に、奈都の母親は目を丸くし


再び、怯え始めた。


「初めまして。田中祐也の保護者で、藤堂忍と申します」


忍はニッコリ微笑み、奈都の母親に名刺を差し出した。


(名刺なんて持ってたのか?)


まさか本当の身分を書いてはいないだろうと思いながら、俺は二人の様子を見守っていた。


すると、その間に三人の教師達と奈都も静かに入ってきた。


(て! 何したんだ!?忍!)


最後に入ってきた奈都は、嘘ではなく本当に泣いていた。


「では、今回は双方和解したという事で」

「「は、はい…」」


忍の言葉に朝倉母子は深く頷いた。


三人の教師達は、あからさまにホッとした表情で


担任は授業の準備の為に職員室に行くと言い


教頭が、奈都の母親に付き添い、見送ると言い


校長は、これから出張だと言い


それぞれ出ていった。


奈都はというと…

真っ先に逃げるように出ていっていた。

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