《MUMEI》
怖いけど確認
「忍…奈都に何をした?」

「別に」


(別にで泣くか!)


俺は忍を睨んだ。


「言っただけだ」

「何を?」

「『嘘もいい加減にしろ』と」

「何で嘘だって…」

「振り払った位でケガなんかするか。

しかも、あの女はバスケ部だろう?」


忍は呆れたように言った。


「でも、万が一って場合が…」

「『今から病院行って確認してもいいぞ。お前の嘘を』と言ったら泣いたぞ」

「…そうか」


(忍、怖いからな)


その言葉が本気で、どれほど迫力があるか想像し


俺は奈都に


ほんの少しだけ、同情した。


「お前だって、母親に精神的打撃与えただろう?」

「それは旦那様を馬鹿にされたから!」

「… 何だと?」


(しまった!)


「ま、間違えた! 母親が馬鹿にしたのは保護者だ…か…」

「つまり俺か」


(しまったー!!)


それから俺は


奈都の母親を『消す』と言った忍を落ち着かせるのに必死になった。


「またあいつらが絡んできたら遠慮なく言え」


(絶対言いたくない!)


帰っていく忍を見送りながら、俺は固く心に誓った。

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