《MUMEI》
瀬川の説明
「一応、補足してもいい?」


無言の俺を怒っていると思ったらしく、瀬川がフォローしてきた。


「別に、いいけど」


(どうでもいいし)


そんな俺の気持ちが表情に出たらしく


「友達が口が軽いと思われたままだと嫌だから、田中君がよくても私が話したいの」

「い、いいよ。美咲」

「よくない」


止めようとする渡辺に向かってきっぱり言い切った瀬川は、今度は俺を見つめた。


そして


瀬川は奈都と同じ中学の出身で、部活も同じで、その頃からプライドが高く先輩を敬わない奈都や、過保護な母親が気に入らなかった事


自分を気に入っていない事を、奈都がよくわかっていた事


を、説明し


だから、自分ではなく渡辺に近付いたのだと続けた。


「もう、半年以上経つし、部活内での評判も悪くなってきてたんだけど

この子は、真面目でお人好しだから、うまく利用されちゃったのよ」

「で、でも! ストーカーは本当かもよ」

「…あの母親がいてそれはあり得ないから」


(確かに)


ため息をつく瀬川に、俺は納得したが


渡辺は、『でも…』とまだ何か言っていた。

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