《MUMEI》
ガキじゃねぇ!
「あんたさ、さっきから何なんだよ!?ガキ、ガキっつって!俺ん事バカにしてんのか!?」
勢いよく立ち上がったせいでグラスの中身がこぼれてしまった。しかも運が悪い事に…
「冷てっ!」
隣に座っていた男に掛かってしまった。
「何すんだよ、ったく…ビショビショじゃねぇか。」

(ヤベェ…やっちまった!話、完全に消えたな。)
後悔してももう遅い。
キレてしまった以上、後には引けない。雄太も男だ、その返の意地はある。
「俺帰る。ガキ呼ばわれされちゃ気ぃ悪いし、あんたも雇う気ねんだろ?」
雄太は『じゃあな』と言い残し、その場から立ち去ろうとした。
「ちょい待ち!」
男が雄太の腕を掴んだ。
「んだよ!!俺は謝んねぇぞ!」
「あぁ、別に謝ってもらわなくて結構。だがな、誰が雇わないっつったよ?」
「え?」
掴まれた腕を振りほどこうと力んでいた雄太は、不意の言葉に力が抜けた。
「今日から雇ってやる。勿論、紙に書いてある通り時給一万円だ。」
「ほ、本当に?マジで一万円?」
「あぁ、マジで。」
さっきまでの怒りは何処へやら、一獲千金の夢が叶った事で雄太は喜んだ。

(俺って単純。でも人間、金には敵わないよな…)
「あ‥有難うございます!よろしくお願いします!」「よろしく。」
握手を交わして簡単に契約成立した。

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