《MUMEI》

行って来い、と背を押してやれば
僅かに頷いてファファは風呂場へと向かった
ソレを見送り、田畑は一人夕食の片付けへ
だが暫く後、風呂場から全く物音がしない事に気付き、片付けも最中に風呂場へと飛びこんだ
「ファファ!」
爽快な勢いで戸を開け放てば
浴槽内で眠り込み、半ば沈みかけているファファの姿があった
「ファファ、大丈夫か!?」
相当慌てて引き上げて
濡れたままの身体を拭いてやり、寝巻代りのシャツをかぶせてやる
熱に眼を回してしまっているファファの額に濡れタオルを置いてやった
「正博君、眼の前がぐるぐるです〜」
のぼせてしまったらしいファファが田畑のシャツの袖を掴みながら訴えて
そんな彼女に田畑は髪を柔らかく梳いてやりながら
「少しのぼせたんだろ。暫く寝てりゃ治る」
だから寝てしまえ、と小声で呟いてやれば頷く事をしてくれた
おやすみなさいの挨拶もそこそこにすぐん寝息が聞こえ始め
完全に寝入ったのを確認すると安堵に胸をなでおろし
田畑は改めて夕食の片付けを、と一人台所へと戻ったのだった……

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