《MUMEI》
おっしゃる通りで…
「はぁ…それにしても散らかり過ぎだろ〜」
雄太はゴミを集めながら、一人グチをこぼす。
「片付けるったて殆どゴミじゃんか…」
もうゴミ袋は3つになっていた。
(この分だとあと2つは増えるな、きっと。)

結構片付き始めたリビングを見回しながら一息つく。

―ガチャ―

中川がシャワーから上がってきた。

「お?結構片付いてきたな。」
「は、はい!」
サボッていると思われてはまずいと、雄太は慌てて手を動かす。
「後掃除機かけて、拭き掃除したら終わり…ま‥す」振り返り、中川を見て動きが止まった。
腰にタオルを巻いただけの、殆ど裸同然の中川が目に飛び込んできたのだ。
「何見てんだよ?」
「いえっ…なんでも…」
服の上から見てもおおよそ予想はついていたが、いかにも男らしいガッチリした体つきだ。

(スゲー!!腹とか蟹じゃん!それに比べ俺は…貧相すぎだろ…)

「えっち。」
中川は、自分の体に圧倒している雄太をからかい始めた。
「なっ!?そ、そんなんじゃねぇよ!!」
「慌てるところがまた怪しい〜!」
「だから違っ…」
「やだぁ、雄太君怖い〜」ムキになる雄太が面白くて更にからかう。
「俺はそんな趣味ねぇ!ノーマルだぁ!!」
変な疑いがかかるのが嫌で、つい大声を出してしまった。
「ハハッ!ジョークじゃねぇかよ。んな怒んなって〜」
「別に怒ってないし!」
「はいはい。」
適当に返事をする中川に、雄太はムスッとしながらまた作業に取り組もうとした時だ。
「ちょ…何処行くんですか?」
また部屋を出ていこうとする中川を呼び止めた。
「何処って、寝室。」
「寝室って…手伝ってくれないんですか?」
「俺今日疲れてんだよ。それに!それはお前の仕事だろ?」
「そう、ですけど。でもっ!」
「でも?」
「少しくらい手伝ってくれても…」
雄太の言い分に中川は溜め息をついた。
「はぁ…あのなぁ、掃除はお前の仕事だ。俺はそれに対して金を払うんだ。しかも時給一万で。そんな俺に手伝う義務あんのか?」

(うっ…確かに…)

正論を言われて反論の余地もない。
「ありません…」
「だろ?」
「はい…すいませんでした。」
「分かれば良し!じゃあ俺寝てるから、終わったら起こして。」
「はい…。」
まだしゅんとしている雄太を見て、中川はフッと笑った。
「寝込み、襲うなよ?」
「誰がっ!!」
「クスッ。嘘ウソ。お休み〜」
中川はヒラヒラ手を振りながら、今度は寝室へ入っていった。
「クソッ…あの野郎〜からかいやがって!」
雄太はブツブツ言いながらも掃除の続きに取り組んだ。

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