《MUMEI》
海の戦い
ジッ…と、空に浮かぶ海を、狂った先生が睨む。それに対して、空から先生を見下ろす海は、まるで回りの空気ごと止まってしまったかのように動かない。2人の周りを静寂が包み込む。





風が、どこからともなく2人を包むように吹き始める。木々を風がなぞり、それぞれの葉が擦りあってささやかな音をたて始めた。

「…リクハドコダ?」

ふと、先生が海に向かって喋り始めた。

「陸は…いません。今のあなたの相手は私です。」

落ち着いた様子で、その問いに答える海。

「…リクハドコダ?」

そう話す先生の体がワナワナと震え始めた。その様子から、怒りを我慢しているのがよくわかる…しかし海はそれにも動じず、先生の怒りを爆発させるのに十分な、決定的な一言を言い放った。


「いないといったのが聞こえませんか。代わりに、あなたのような雑魚にわざわざ私が相手するんです。せいぜい楽しませてくださいね?」

先生の震えが急に止まった。そしてその瞬間…

「オマエモ…コロシテヤル!」

ついに…止まっていた刻が動き出した。

「かかってきなさい…!」

―――――――――




先生が大きく振りかぶると同時に、海が全速力で空から彗星の如く蹴りを繰り出す。


「…ふっ!」

「ガァァァ!」


バシィィィィン…


ぶつかった拳と踵が、お互いの勢いに呼応して辺りにものすごい音を轟かせた。

「ダァァ!」

間髪入れず殴りかかろうとする先生に対して、海は一度後ろに退き体制を整える。

「ハナレテモムダダ!」


しかし、先生のその言葉と同時に、距離を置いたはずの海の腕に、謎の一撃が決まった。


「…あうっ!」


「ザコトイッタナ…コロシテヤル!」



…ふと、海が笑った。謎の一撃によって腕に激しい痛みを抱えてるはずなのに。そして、そのまま笑みを浮かべながら…誰に聞かせるともなく、陸が聞いていたなら驚くであろう衝撃の一言を言い放った。


「フフ…相手にとって不足なし。海さん…体借りますよ?相手は恐らく【殴る】力…今は滅びし伊須村の首長、岡田様が娘…お雪。参りますっ!!」

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