《MUMEI》

驚異的な速さで突進する海。それを、どっしりと構え拳で迎え撃とうとする先生。


そして再び2人ぶつかり合う…。そう思われたその瞬間、目の前で急に止まった海は、自分に迫り来る拳を右手でいなし、そのままの勢いで腰を捻り顔に裏拳を打った。


「…ナニカシタカ?」

先生はそういってニヤリと笑い、間髪入れずに拳を振るう。

それらをかろうじて避け続けた海だったが、再び謎の一撃により腹部に強打をくらい、2メートルほど吹っ飛んだ。

「ぐっ…。さて、どうしましょう…?」

空に飛び上がったときに、先生も追いかけて来たため戦っている場所は外。陸のように叩きつけられることはなかったが、それでもダメージは小さくない。

「ソンナヨワイカラダデハタエラレナイダロ。」

ひとまず…謎の一撃が何かを見極めなければならない。先生の言葉を痛く感じながら、冷静に考え始めた。

「ガァァ!」

その間もラッシュは止まらない。埒が明かないと判断した海は、一度空へ浮かび上がった。だが…


「キャァッ!?」


右大腿部に強烈な痛みが走った。まただ。これはなんだ?遠くにいるはずのに、先生が振りかぶるとまるで直接殴られたような痛みが走る。…ん?殴られたような?

「そうか…!【殴る】力による遠当て!」

先生は【殴る】Verbによって、海を標的にすることで離れても当てていた。恐らくわかってやっているわけではないだろう…あの様子では。

「多分…先生は操られているはず。」

からくりは暴いた。あとは…倒すだけだ。

「しかし…少しくらいすぎましたね…。」

そう。Verbによる遠当ては、必ず当たる上どこに当たるかわからないので避けることができない。必死に思考を巡らせながら宙を飛び回ってはいたが、間接的に殴られ続けた海の体はすでに悲鳴をあげていた。

「シブトイナ…ハヤクシネ!」

先生は相変わらず拳を振り回し続けている。ただでさえでかい図体と、それに見あったスタミナによって繰り出される拳は、その勢いを衰えさせる気配を全くさせない。


「…仕方ありません。海さんの体も限界…一発で決めます。」


そう呟いた海は、地上に降り、体勢を低く構えた。

「ムダダ。アキラメテシネ。」

「…残念ですが、終わりです。」

そう海が言い終わった瞬間…









海が消えた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫