《MUMEI》

昔からそうだ。
俺は普通にしていても周りがそれをよしとしなかった。
例えば、うちは内縁だから父親もいたが殆ど母さんが一人で俺達を育ててくれれたし。
片親ということでよく幼い頃は友達に質問されては困っていた。
数年後、父親は母さんとずっと付き合っていながら出世の為に別の人と結婚したと知った。

母さんは身篭っていたのに、結婚しなかったのだ。
しかも、母さんから身を引いたという。
母さんは逆に距離を置く事で父さんを縛っていたらしかったらしい。
俺にはそんな感情理解できない。
母さん自体、変人なとこがあるし。

その後、俺には年子の兄がいると知らされた。


……それが、この若手俳優である高遠光である。



「なっちゃん、なんかトリップしてるよ俺の弟。」


「光ちゃん、たまにこうなるのよ気にしないで。」

棗と高遠は意気投合しすぎだ。


「なっちゃんキレーになっててびっくり。」

金かかってるからな。


「私も光ちゃんから招待券きた時はびっくりしちゃった。すっかり色香振り撒いてー。」

男にその表現は如何なものか。


「俺なんかまだまだ、世の中は広いからね!
なっちゃんにはいつか会いに行くつもりだったから良かった。
俺の母さんが昔、なっちゃんに酷いことしたでしょう……ごめんね。」

何があったんだろう、全然覚えていない。


「いいのよ、お陰で私、自分の気持ちに自信が持てた……」


「素敵な姉に乾杯。」


「……なあ、高遠は俺達の事どう聞かされた?俺は父さんが話したがらなくて今日まで知らなかった。」

これは、気になる。


「姉がいるのは知っていたけど弟は最近だよ、母さんが教えてくれた。」


「……さっきから気になってたんだが、高遠の母さんが棗を『姉』って言ってたのか?」


「うん。」

高遠はこっくり頷いた。


「もぅっ、おかーさま大好きぃ〜!」

棗の反応で流石に高遠も気付き始めた。
俺の周りは俺を普通にさせてくれない、その数に俺の兄も当然入る。


「なっちゃん……昔、スカート履いてたよね。」


「今も履いてるわよ?」


「母さんは女の子が欲しかったから……。」

小学生になっても母が棗にスカートを履かせていたことを思い出した。


「あら、今も女の子じゃない。」

棗は大学生まで、彼女もいた。
それが数年前、突然会社に辞表を出し、そういうバーで働き始めた。
今はダンサーとして店でも人気が高いらしい。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫