《MUMEI》
やればできる!
「終わった…やっと終わったぁ!!」
見違える程綺麗になった部屋を見渡して、雄太はへたり込んだ。
「ふぅ…疲れた。それにしてもこの部屋、案外広かったんだ。まぁあんだけゴミありゃ狭く見えるわな…」集めきったゴミの方をチラッと見る。結局ゴミ袋は合計7つになっていた。

「おっと!そうだ、中川さん起こさなきゃ!!」
大事な事を忘れてたと直ぐさま立ち上がり、中川が入っていった部屋の扉をノックした。

―コンコン!―

「中川さん、終わりましたぁ!中川さ〜ん!」

熟睡しているのか、暫く待っても返事がない。

―ドンドンドン!―

「中川さ〜ん!おはようございますぅ。掃除終わりましたよ〜。」
今度は強めにノックしてみた。しかし中川は中々起きて来ない。

(どんだけ熟睡してんだよ!?)

このままでは埒が明かないと思い部屋に入った。

薄暗い部屋にはベッドただ一つ、それだけしか置いてなかった。後は壁と一体化したクローゼット。
先程のリビングとは全く正反対でスッキリしている。

(殺風景な部屋…)

グルリと見回した後、雄太は布団に包まっている中川の肩を揺すった。

「中川さん、中川さん…」「ん〜…」
中川はモゾモゾと起き出した。
「…何だよ……」
寝起きでハスキーな声を出す中川の顔が、少し不機嫌そうで雄太はたじろぐ。
「すいません…あの、掃除終わったんで…。」
「あ、そう。どれどれ…」のっそりと起き上がり、リビングへと歩いていく。

(この人、露出癖あんのかよ…?)

黒いボクサーパンツ一丁の後ろ姿を見ながら、雄太は後に続いた。
「お〜!綺麗になってんじゃん!やるなぁ雄太!」
「そりゃ、給料懸かってますから。」
「じゃあついでに晩飯も頼むわ。」
「へ?」
「へ?じゃねえよ、もう8時だぜ?いい加減腹減ったし。飯、作れんだろ?」
言われて気付いた。

(俺2時間も掃除してたのか…)

「何でもいいですか?」
「あぁ。俺嫌いなもんねぇし。」
「じゃあキッチンお借りします。」
一人暮らしが長いせいか、雄太はいつの間にか料理は得意になっていた。

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