《MUMEI》
クラスメイト
「なんなんだよ、次から次へと」
うんざりした表情でユウゴは言う。
すると、ユキナが小声で耳打ちしてきた。
「ね、ユウゴ。見て、あいつの足」
「足?」

 彼の足には、黒い鉄製らしき輪がはまっていた。
確か、それはこのゲームから逃げようとした者の中で子に対するペナルティ。
それをつけているということは、この男は子なのだろう。
逃げもせず、こんな堂々としている子も珍しい。

ユウゴも人のことは言えないのだが……

「久しぶりだね、ユウゴくん」
男は口の端を僅かに上げた。
「……は?」
「ちょっと知り合い?」
「え、いや。…誰?」
「僕のこと、覚えてないんだ?」
ユウゴは一生懸命に記憶を探るが、わからない。
「マジで誰?」

すると彼は眼鏡をクイっと上げて不敵に笑った。

「そうだろうな。君にとって僕はただのゴミ同然。昔、君がしたことによって、僕がどんな気持ちだったか知りもしない」

「……何したの?」
「いや、だから、覚えてねえって」
そう言ってユウゴは男を睨んだ。
「だから、おまえは誰だよ?名前ぐらい教えろ」

すると男の顔から笑みが消え、明らかな敵意を込めてユウゴを睨み返した。
「草野だ。君と中学の時同じクラスだった」
「中学?」
ユウゴは草野と名乗る男を見つめた。

 ユウゴの中学時代といえば、ごく普通の子供だった。
人に恨まれるようなことは……
「……あ!」
思い出した。
確かにいた。
草野というクラスメイトが。

 目立たない地味な生徒で、今かけているような黒縁眼鏡をしていた。
いつもオドオドしていたのを覚えている。

「思い出したか?」
草野は鋭い視線をユウゴに送る。
「ああ、思い出した。けど、俺、おまえになんかしたか?」
まったく心当たりがないわけではない。

 彼は中学時代、ずっといじめられていたのだ。
それはクラスの男女全員からされていたことであって、特にユウゴが何かをしたというわけではない。
むしろ、ほとんど何もしなかったといってもいいはずだ。
ユウゴは、傍観者だったのだから。

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