《MUMEI》 カフェにて仕事といっても、ただのアルバイト。 田舎育ちの貴士にとって都会での生活は憧れだった。 高校を卒業するや、早々に家を出、今の街に引っ越したはいいが、考えなしに来たものだから、未だ職も安定せず、フリーターを続けているのだ。 この日も朝からカフェ、夜はバーのバイト掛け持ちだ。 「ふぁ…」 やはり寝不足のせいか、欠伸が何度も出る。 「何?寝不足?」 横にいた山下が聞いた。 山下とはシフトがよく被り、なんとなく仲良くなった、この街で数少ない貴士の友達だ。 「うん、まぁ…」 「最近多いよな?何、深夜にエロ番組でもやってんの?」 「…あほか。」 ニヤける山下を横目に貴士は呆れた素振りを見せる。 そんな単純な理由ならすぐに解決している。 けれどあの夢はどうだ? 何故毎日見る? 何故毎日同じ時間に目が覚める? ただの偶然とは思えない。 「貴士?」 「え?」 「どうしたよ?マジな顔して…」 いつの間にか一人考え込んでしまっていた貴士を、怪訝そうに山下が覗き見ていた。 前へ |次へ |
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