《MUMEI》

視界より感覚を頼りにするしかない。
陣地を侵したというのに基地からは誰一人として人の影は見えない。まるで、予め知られていたように。


Bー7……L42
受信した記号をモニターで映し出す。

小隊毎にイツバはアルファベットで振り分けられていてBー7則ち、第七小隊のB番が、小型地雷を破壊する。
向いた銃口から煙が一筋伸びていた、破片が広範囲に飛び散る。
L42はイツバの視界を数値に変換したときの位置だ、数値にすることでより正確に照準を合わせている。

その時、轟音が頭を貫いた。


爆発だ。
前列を進撃していたイツバは一瞬で青い炎に飲まれてゆく。
僕は皮膚が爛てゆくのを覚えた。
入口もろとも僕等を破壊してしまおうという算段なのだ。

地雷では無い、入口自体が銃口になっているかのような、放射能に似た閃光が溢れる。




『伏せろ』

“あいつ”の冷淡な声がする。
僕等は反射的に床に張り付いた。
聞いたことの無い曲が耳を支配する、聴覚から脳へ最短ルートを使い情報が染みてゆく。

ソプラノ歌手のような高音質が鼓膜を破裂間際まで追い詰めた。
僕等は心臓が高鳴った。
それは、突然の大音量によるものもあったがそれとはまた別の高揚感もある。


耳の奥に震える心臓の音を感じた。
心音の唄が聞こえたのだ。



それはとても、
僕の名前を呼ぶ声に似ている。

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