《MUMEI》
志望動機
「なぁ、一個聞いていいか?」
カウンター越しに見える雄太に中川は質問した。
「何ですか?」
「お前の志望動機って何だったわけ?」
「動機、ですか…?」
一番聞いて欲しくなかった事に触れられて、雄太の顔が曇った。
「言いたくないんなら無理にとはいわねぇけど。」
「…………………。」
「雄太?」
「…………………。」
「おい、聞いて…」
「金です…。」
「まぁそりゃそうだわな。時給いいもんな。」
「はい…。俺、どうしても金がいるんです!」
「……何で?」

触れられたくなかったが、本当は誰かにこの苦しみを聞いて欲しかった。
そうすれば少しは楽になるかもしれないと思ったのだ。

「俺、借金があるんです…」

雄太は語り始めた。

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫