《MUMEI》
雄太の過去
3年前。
雄太がちょうど二十歳を向かえた年…
―プルルルル…ガチャ―
「もしもし。」
俺の携帯に一本の電話が入った。
「よう雄太!久しぶり!」「え…?え〜っと…どちらさんでしたっけ?」
携帯の画面に名前が出てなくて、相手が誰だか分からない。
「おいおい〜覚えてね?俺だよ、田中。田中明宏だよ!」
「田中‥たなか…ああ!」聞き覚えのある名前だった。
『田中明宏』と名乗るこの男は、中学の時同じクラスだった奴だ。
「思いだしたか?」
「うん。アッキーだろ!?」
俺は当時そう呼んでいた。それくらい仲が良かったのだ。
しかし、田中は中学卒業後、直ぐに親の都合で転校してしまい、その日以来一度も会っていなかった。
「ほんと久しぶりだな!アッキー今どうしてんの?元気してんのか?」
「ん?まあな…。それより俺今こっち来てんだけど今から会わねぇ?忙しい?」
旧友に会えるのだ、断る訳がない。
「全然!どこで会うよ?」「駅前にちっちゃな居酒屋あるだろ?俺、今そこで飲んでんだ。お前も来いよ」「あぁ、あそこか。」
その居酒屋へは何回か行ったことがあるから、よく知っていた。
「直ぐ行くわ!」
俺は電話を切ると、急いでそこへ向かった。
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