《MUMEI》
葉月さんの苦悩
「その時家に残ったのが、俺と妻と美緒。

俺の家はこの近所だから、騒ぎを知って来ていたんだ。

そして

意識を取り戻したキヨさんは笑って

美緒の手を握りながら

…眠るように逝ってしまった。



葉月が帰って来る前に」


(そんな)


春日さんの一番近くにいたのは、葉月さんと美緒さん。


更にブログの印象でいえば

美緒さんより、葉月さんが春日さんの世話をしていた。


(なのに…)


一番近くにいたのに。


最期の時にはいられなかった。


…俺は、知っている。


その、痛みの、傷の深さを


(だって)


俺が、そうだった、から。


そんな事を考えている俺に、男が驚くべき提案をした。


「キヨさんに、会って行くだろう?

…君も辛いだろうけど

会ってやってほしい」


(何を言ってるんだ? こいつは)


俺は無意識に、男を睨んでいた。


「キヨさんの、体、まだ…ここにいるの。だから…」


弱々しく、説明したのは


先ほどよりは落ち着いた様子の美緒さんだった。


「俺、見てもいいんですか?」


大事な人を亡くしても、そんな経験は俺には無かった。

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